最高裁判所第二小法廷 昭和25年(し)11号 決定 1951年4月27日
主文
本件特別抗告を棄却する。
理由
抗告人滝内礼作の抗告理由について。
記録を調査するに本件勾留の起算日は昭和二四年四月二二日(公訴の提起があった日)であるから、そのまま勾留されていれば六月二一日が勾留期間満了の日にあたるのであるが、被告人は四月二八日まで勾留され、同日保釈決定により釈放されたので、四月二九日から勾留期間の残存期間を暦に従って算出すれば、五月二八日で一ケ月となり、五月の残存日の三日と六月の残存日の二一日を加算して残存期間は一ケ月二四日となるのである。しかるに被告人は八月四日に再び収監されたのであるから、八月四日から右残存期間一ケ月二四日を暦に従って算出すれば九月二七日が右残存期間の満了日にあたることは計算上明白である(抗告人は原審で前示残存期間を日数に換算して五四日と計算し残存期間の満了日を九月二六日であると主張するが、前記のように暦に従って計算すべきであるからその主張は理由がない)。従って、本件勾留の更新は九月二八日から行わるべきものであるから原決定の勾留期間の計算は正当である。ところで所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであって右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読すべきか、或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であって、かかる記載が刑訴規則五九条に違反するものであることはいうまでもない。しかし本件勾留更新は九月二八日から行わるべきものであることは前説示のとおりであるから、右勾留更新決定書中の更新日は二八日と記載されたものであると解するのを相当とする。従って、更新日の記載が前示のように明瞭でないからといって、右更新決定を無効であるとすることはできない。論旨は右更新決定が無効であることを前提として憲法三一条違反を主張しているのであるが、その前提の採るべからざる以上論旨は採用できない。
よって刑訴四二六条四三四条により主文のとおり決定する。
右は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎)